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インタビューレポート③~SDGsの推進活動[ 啓発動画・取り組み集 ](桐生市役所・坂主樹哉さん)~

未来共創ワークショップから生まれたアクション ③
手を取り合う未来「情けはひとのためならずの湯」SDGsの推進活動[ 啓発動画・取り組み集 ](桐生市役所・坂主樹哉さん)

《 背景 》
 群馬県が目指す未来を記した「新・群馬県総合計画」。その柱のひとつに産学官民が多様な分野で連携し、地域の課題の解決を目指す「官民共創コミュニティ」があります。その実現に向けて、令和3年度より始まった「未来共創ワークショップ」。官(=県や市町村などの行政)と民(=地域住民や企業等)が、それぞれの立場を越え、共にテーブルを囲み、地域の想いや実情に寄り添いながら、地域の課題解決に取り組む。そんな関係を紡いでいくことを、このワークショップでは目指しています。
 また合わせて、話し合いがスムーズに進むように県と市町村職員にファシリテーション技術を学んでもらう研修も実施。そうすることで継続的に地域を支援できる体制づくりを行っています。

 今回は、令和3年度の未来共創ワークショップで生まれた未来の芽(アイデア)を実現している方々にインタビュー。未来共創ワークショップはどんな場だったのか、ワークショップ後アイデアの実現に向けてどんなことを考え、どんな行動をされたのか、官民共創のポイントをお話いただきました。
 第3弾は、桐生市役所の坂主さん。SDGsを紐付けた計画づくりやイベントを行っている桐生市。本ワークショップでは「SDGsの理念を市民一人ひとりが自分ごとにするためにできること」というテーマのもと話し合いを進めました。

Q . ワークショップを終えての感想を教えてください。
 はじまる前は、期待よりも「大変なんじゃないか」という不安が大きかったです。“ファシリテーター”という言葉にも馴染みがなく、研修を受けただけで自分が前に立てるのか、という気持ちが当時は大きくて。でもやってみると、運営メンバーの県庁のみなさん、issue+designのみなさんが丁寧に教えてくれ、本番のワークショップ中もリードして進めてくれたので安心して参加することができました。また、いろんな立場の人が集まってお話するという機会は今までなく、アイデアを聴くことができたので、楽しく参加することができたと思います。民間や県庁に知り合いが少なかったが、今回でだいぶつながることができました。

▲ ワークショップの様子

Q . 啓発動画と取り組み集は「未来の種(アイデア)」にはなっていませんでしたが、なぜやろうと思ったのですか?
 今回のワークショップに参加するにあたり、3回の中ででたアイデアや課題意識は全部拾っていこう!という気持ちで臨みました。また未来の種として残った5つはすぐに実現するのが難しそうなものだったので、未来の種にはならなかったけれど、参加者の方の多くが賛同したような意見に目を向け、やれるものからやることにしました。その中で、特に多かった意見が、SDGsってそもそも何?、なぜSDGsを自分ごとにしなくてはいけないの?、行政の情報発信不足などでした。出てきた意見はごもっともという感じで、桐生市では、職員対象の勉強会や、国や民間のSDGsの連絡会議参加など、内部での理解促進、情報収集はしてきましたが、(一年前の時点だと)市民への周知みたいなところはまだ始めよう、動き出そうとしているところだったんです。
 (その当時は市の広報誌や報道発表などにSDGsのアイコンを掲載するなどはしていた)そんな中、ワークショップででた意見を受けて、もう少ししっかり、SDGsとは何なのか?、市民一人ひとりは何ができるのか?、桐生市はSDGsの観点で何をしているのか?、ということをわかりやすく伝えられたらいいなということで作成にチャレンジしました。

Q . 啓発動画について教えてください。
 動画は、桐生市の魅力発信課が近年、動画コンテンツをつくることに力を入れていたということもあり、魅力発信課を事務局として、3年前に発足し、私が昨年(2021年度)のリーダーを努めていた「SNS活用プロジェクトチーム」の有志たちでつくりました。
 まずSNS活用プロジェクトチームのみんなにワークショップでこんな意見が出ていたということを報告し、このプロジェクトチームの力を使おうと提案しました。その後、リレー形式で職員の個人的なSDGsの取り組みを紹介することで市民に「自分の行動とのつながり」を感じてもらえるような動画にしようということが決まり、魅力発信課の課長さんのところに案を持っていったところ、「このアイデアすごくいいね」と言ってもらえ、すぐさま、市長と副市長に説明に行ってくれたんです。教育長も協力していただけることになり、トントン拍子でつくることが決まりました。
 自分でもここまでのスピード感を持ってできたのはびっくりしていて。普通に政策としてつくると時間がかかるが、各所属から離れた有志のメンバーで取り組んだことがあのスピード感につながったのではないかと思っています。みなさんが協力してくれたのでできた取り組みです。

▲ SDGs啓発動画「みんなでつなぐ~私のSDGs~」 
▲市長も出演しメッセージを発信

Q . 取り組み集について教えてください。
 取り組み集は、SDGsの先進自治体でつくっているところが多いので、その中からわかりやすいものを見つけて参考にしながら、桐生市版をつくることにしました。先ほどの啓発動画はプロジェクトチームの有志職員による製作でしたが、取り組み集は企画課で作りました。ワークショップででた意見もありますし、SDGsをまちづくりに活かすという市長の公約もあるので、もう少し踏み込んだ啓発をしないといけないよね、という話の中で、その第一歩として、SDGsのために桐生市が何をしているのかまとめることにしました。
 全庁的に全ての課に解答を必須にして「最も重視するSDGsのゴール(3つまで)」「選んだゴールの中で、取り組んでいること」「市民に取り組んで欲しいこと」を質問しました。
 取り組みを外に出して市民に広めるだけでなく、庁内でも自分たちが重点的に取り組むSDGsはなんなのかなど全ての職員にSDGsについて考えてもらうきっかけになればいいなと思い投げ掛けました。全ての課からものすごい量の返答がきたので、その中から精査をして、市民から見て、SDGsとの関連性がわかりやすいものを取り組み集にしました。
 作り始めたのはワークショップ中の2021年12月末で、4月に公開しました。ワークショップの内容は随時課内に報告していたので、すぐに行動に移せました。その都度課長からコメントをもらっていたので、それを整理し、スピード感を大事にしながらかたちにしていきました。課長は、行動力があり、顔も広い方なので、色んな課を巻き込んだりする時にいつも力強く後押ししてくれることもこの取り組みがスムーズに進んだポイントであるかなと思います。

▲ SDGs達成に向けた桐生市の取組集(表紙)
 ▲市の取組とともに市民にも取り組んで欲しいことを掲載

Q . 今後について、どんなことをしていきたいのか展望はありますか?
 市民への周知は、発信し続けることに意味があると思っているので、このまま続けていきたいです。市の取組に反応してくれている市民の方もいて、講座を開催したいとの要望を受けたりしているので現在どんな内容にするか検討中です。こういった取り組みをすることによって市民への周知がより広がることを期待しています。秋には、第2回「あつまれSDGs!(市民団体と共催するSDGs啓発体験イベント)」の開催が決定しました。昨年は選挙の投開票日と重なり、当日参加できませんでしたが、今年こそは参加して、生の声を聴きたいと思っています。
 ワークショップで得た情報を市役所内の仲間に随時伝えていたことで、多くのアイデアを実現した坂主さん。ワークショップを通してできる新たな仲間のつながりももちろん大切ですが、すでに自らが持つ財産、仲間のつながりも生かしていくことで、多くの人を巻き込んだアイデアを実現することができたのではないでしょうか。
 このアイデアが実現したことでSDGsの理念が桐生市市民に浸透し、桐生市がどんなまちになるのか、とても楽しみです。

※ これは、2022年6月29日(水)時点の内容です。

~追記~
 2023年5月22日には、桐生市が内閣府から「SDGs未来都市」に選定されました!この案件にも担当として携わったのが坂主さんです。SDGs未来都市に選定された今のお気持ちについてコメントをいただきました。

【坂主さんのコメント】
 このたび、桐生市が「SDGs未来都市」に選定され、大変嬉しく思います。
 桐生市が選定された提案書のテーマは「ゆっくりズムのまち桐生」です。桐生市発祥のグリーンスローモビリティである低速電動バスMAYUなどを活用しながら、価値観の転換により、楽しみながら人にも地球にもやさしいライフスタイルを実施する行動変容を促すとした提案内容です。
 SDGs未来都市へ応募しようということは、私が未来共創ワークショップに参加し始めた令和3年度の半ばに決まりました。未来共創ワークショップは、色々な立場の人からお話やアイデアを聴けるチャンスでしたので、未来の種を生むだけではなく、SDGs未来都市提案書を書くヒントを得て、良いものは取り入れようという気持ちで参加していました。
 提案書の執筆にあたっては、書き方が分からない項目が多く、苦労ばかりでしたが、未来共創ワークショップなどで得た知見を総動員し、内閣府が令和4年度初開催した「地方創生SDGs人材育成講座」への参加も経て、満足できるレベルの提案書を書くことができました。
 なお、提案書では群馬県もステークホルダーに位置付けており、官民共創コミュニティや、令和4年度に未来の芽として実施した「ぐんまSDGsプロジェクトIn KIRYU!17色のひもかわづくり」のことも記載しています。
 今後は、あらゆるステークホルダーと手を取り合いながら、提案したSDGs未来都市の実現に向けて取り組んでいきます。直近の予定では、年内にキックオフも兼ねたSDGs未来都市体験イベントを実施しようということで、企画を進めているところです。

▲岡田大臣(右)から選定証を授与された荒木市長(左)
▲「SDGs未来都市」選定証

    

■プロフィール
坂主 樹哉さん 桐生市共創企画部 企画課 6年目(2022年度時点)。北海道登別市出身。地元の高校卒業後、群馬大学工学部への入学とともに群馬県に移住。1年目を前橋市荒牧町で過ごし、2年目から桐生市在住。大学卒業後、同大学大学院へ進学し、博士(工学)の学位を取得。大学院修了後は群馬大学に助教として勤めた後、転職して桐生市職員となる。現在の担当業務は、大学連携、SDGs推進、公民連携など。  

「自分も地域でこういった活動をやってみたい!」、「官と民とで共創して地域課題に取り組みたい!」、「○○さんと一緒に取り組みたい!」 など、県の官民共創事業や坂主さんの活動に興味のある方は群馬県未来創生室までご連絡ください。 みなさまからのご連絡をお待ちしております。

このレポートに関するお問い合わせ
群馬県 知事戦略部 戦略企画課 未来創生室
〒371-8570前橋市大手町1-1-1
TEL:027-226-2313